2024/11/10 「神の民の選び」創世記13:1~18 伝道師 太田 好則

◇創世記12章から始まるアブラムの物語では、それ以前に比べて、登場人物の性格がかなりのリアリティをもって描かれている。11章の最後でアブラムはカルデアの地ウルから出発する。このウルという地はどこであったか、考古学的に確認されている。続いて12章の初めでアブラムは主なる神様に突然話しかけられ、神様が示す地に行くように命じられ、そしてアブラムを大いなる国民とすると言う約束を語られる。最終目的地も示されず、子も与えられていない状況での約束は、普通の人にはとても信じることができないが、アブラムはその約束を信じ、神の命令を実行する。カナンの地に入ったアブラムは、再び「この地を与える」という神様の声を聞き、祭壇を築く。
◇飢饉のためアブラムはエジプトに避難するが、そこでの行動はかなり自己中心的である。自分の生命を守るため、妻を「妹」と言うのである。妻サライの出自を聖書は語っていないから、虚偽とは断定できないが疑わしく、この言動が自己中心的であることには変わりがない。アブラムは欠点もあり、罪を犯す存在である。
◇エジプトからカナンに戻る時にはアブラムも甥のロトも、かなり多くの羊や牛を持っていた。それにその地にはカナン人、ペリジ人といった先住民がいて、すでに良い牧草地は彼らが支配していた。残りの牧草地はアブラムとロトの群れが共に住むには狭すぎた。そこで、アブラムは、ロトに別行動をすることを提案する。そしてロトに選択権を与えるのである。ロトは山地の東側、ヨルダン川に沿った豊かな地域を選び、アブラムは西側、さほど豊かでない土地に向かうのである。ロトが選んだ地域にはソドム、ゴモラといった、ほとんどの人が神を忘れて享楽にふける町があった。ロトはこうした町に憧れ、短期的な利益を求めた選択をしたともいえる。
◇ロトはアブラムのもとから去っていくが、神様はアブラムを掴んで離さない。エジプト滞在中の自己中心的な、罪ある行動にも関らず、祝福と恵みを無条件に与えられるのである。