礼拝説教


2007/2/18 礼拝説教

「母なる教会」 白鷺教会牧師 岩本 聖史先生

Ⅰテサロニケ2:17−3:5


◇『テサロニケの信徒への手紙』を読んで分かることは、使徒パウロとテサロニケ教会との間にあふれている「主に結ばれた深い愛」です。この箇所に、パウロが、テサロニケ教会を再訪したいという希望と、それが実現しなかったので、弟子のテモテを派遣したという事実が記されています。

◇パウロは同教会の信徒との再会を願いながら、同教会への祈りの中で、再臨される主イエス様の前で、この教会が「わたしたちの希望、喜び、そして、誇るべき冠」だと感謝したいと述べています。テサロニケ教会の信徒にとっても、パウロ先生こそ「希望、喜び、誇るべき冠、誉れ、喜び」だったことでしょう。

◇主の御前に立って、主にあって愛する相手を、互いに感謝と喜びを報告できることほど、すばらしいことはありません。私たちの地上の歩みでも、家族や友人が仲良く過ごしている姿は、すばらしいものですが、特に、主イエス・キリスト様によって結ばれた「霊の家族」として、パウロと、テサロニケ教会の信徒たちは、すばらしい愛の交わりを作り上げていたのです。

◇激動の中にある同教会を覚えながら、パウロは、代理として弟子のテモテを派遣します。テモテという人物は、当時の教会で、目立った存在でなかったかも知れません。『テモテへの手紙』を読んでも、比較的、若く、健康な人でもなかったようであり、議論好きで、そのため失敗をし易かったようです。母はユダヤ人のキリスト者であり、父はギリシャ人でした。国際的な雰囲気を持った家庭で育ったのが、テモテだったと思います。

◇彼の母親は、エウニケで、「祈りの母」でした。祖母はロイス。祖母も敬虔なキリスト者でした。テモテはこの二人の信仰者に祈り育てられた人物でした。そして、パウロの弟子として、福音信仰に育てられました。

◇つまり、テモテは、パウロやペトロのような「最初の世代」と違う点をもっています。「祈りの家の教会群としてのキリスト教会の伝統の中に育てられた第二世代に属する人物」です。第二世代は、最初の世代からのバトンタッチを的確に受けて、継承した福音宣教の使命を果たして行かなければなりません。古代教会が生んだキュプリアーヌスは、『教会の一致について』の中で、教会のことを、「母」と表現し、アウグスティヌスも「母なる教会」を受け継ぎました。そして、カルヴァンは、『綱要』の中で、「母なる教会」を明記しました。

◇パウロやテモテや、彼らの祈りに育てられたテサロニケ教会の信徒たちのことを考えますと、すべてのキリスト者が、「母なる教会」から生まれ、育てられた人々であり、そのような霊の家族が、 今、わたしたちの教会のひとり、ひとりとなっている恵みの事実が分かって来ます

◇教会は、主イエス様が預言者の言葉を通して言われたように、「全世界の人々の祈りの家」です。母の祈りにはぐくまれて、信仰の子どもたち、 信仰の孫たちが育っていくように、教会の祈りが,今日も、明日も、多くのキリスト者を育てて行きます。わたしたちお互いは、どんなに小さな弱い存在であっても、そのような使命を担っているのです。一日、一日と、その使命,特に、家族や、教会の家族への「とりなしの祈り」という使命を果たして行きたいと願います。わたしたちが祈らなければ、今、ほかに、その方々のための祈りはささげられていないかも知れないのです。祈りの使命と責任を覚えながら主の福音を伝え続け、母なる教会にあって生き続けてまいりたいと思います。



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