2008/7/6 聖霊降臨節第9主日
「破局からの救い」 牧 師 大村 栄
使徒言行録27:33〜44
◇パウロの行う異邦人伝道を憎悪するユダヤ人らはローマ総督にパウロの処罰を願い出たが、パウロは「皇帝に上訴します」(25:11)と宣言し、総督はローマ市民であるパウロをローマに護送せざるを得ない。ローマへ伝道はパウロがかねてから望んでいたものだが、それがこんな方法で実現したのは、これが人間の計画ではなく神の計画だったからだ。
◇船旅のルートは聖書巻末の地図(9)に記されている。クレタ島の「良い港」を出港した途端に暴風が吹き下ろし、船は一気にアドリア海の沖合に押し出された。破局的事態の中で主が言われた、「24:パウロ、恐れるな。あなたは皇帝の前に出頭しなければならない」。この船の航海は自分の計画でなく、「神の必然」であるがゆえに最後まで守られる。パウロはそう確信して、「25:皆さん、元気を出しなさい」と励ますことができた。
◇パウロは彼らに食事を勧めた。不安と船酔いのために食事をする元気もなかったのだろう。「34:どうぞ何か食べてください。生き延びるために必要だからです。あなたがたの頭から髪の毛一本もなくなることはありません」。主イエスは言われた、「あなたがたの髪の毛までも一本残らず数えられている。だから恐れるな」(マタイ10:30)。
◇私たちのすべてを覚えて下さる神の愛。神はその愛を実践するために、独り子を世に遣わされた。この神の愛のしるしなるキリストを受けとめることにおいて、私たちは恐れの荒波を乗り越え、元気(生きる勇気と希望)を取り戻すことができる。
◇「35:こう言ってパウロは、一同の前でパンを取って神に感謝の祈りをささげてから、それを裂いて食べ始めた。36:そこで、一同も元気づいて食事をした」。これはまさにキリストが私たちのために血を流し、それによって私たちの罪を赦し、永遠の命を生きる者として下さった、そのことを覚える聖餐を分かち合う言葉と仕草である。
◇このあと船は難破し、みな海に投げ出されるが、276人の乗組員全員が無事にマルタ島に上陸できた。「神の必然」がこの運命共同体の航海を支えたのだ。私たちも今日、神の愛のしるしである主イエスが共にいて下さることを味わい知る聖餐の恵みを受けて、阿佐ヶ谷教会の航海に、そしてそこにつながる一人一人の航海に今こぎ出そう。
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