礼拝説教


2008/7/13  聖霊降臨節第10主日

       「パン五つと魚二匹の奇跡」 牧 師 大村  栄

ヨハネ福音書6:1〜15 


◇「五千人に食べ物を与える」という、四つの福音書のいずれにもある有名な記事。「パン五つと魚二匹」が一人の少年の持ち物であったと告げるのはヨハネ福音書だけ。ほかにも自分の食糧を持っている者たちがいたかも知れないと思わせる。そしてこの少年が自発的にか、弟子たちに促されてか、自分の弁当を提供した行為に促されて、ほかの人々も自分の弁当を差し出したかも知れない。そのときに奇跡が起こったのである。>

◇世界の歴史にしばしば起こる「飢饉」、すなわち大規模な食糧不足は、長雨、日照りなどの自然災害に加えて人為的な食糧の配分に問題のある場合に起こるそうだ。第二次大戦中の1943年に、インドで300万人が亡くなるという「ベンガル飢饉」が起こった。日本軍の侵攻が噂され、英国とインドの連合軍や政府当局が食糧備蓄に躍起になった結果、食糧が人々の手に渡らず大規模飢饉が発生した。>

◇あの少年が自分の弁当を自分一人で独占せずに、皆に提供したことが奇跡を生み出すきっかけとなったのだが、この出来事のもっと大事な要素は、主がこれを祈って分けられたということだ。「11:イエスはパンを取り、感謝の祈りを唱えてから、座っている人々に分け与えられた」。そうしたら皆は満腹し、パン屑で12の籠がいっぱいになった。>

◇ゲッセマネの園で主は、「アッバ、父よ、あなたは何でもおできになります。この杯をわたしから取りのけてください」と苦難からの解放を求めた。しかし続けて、「わたしの願うことではなく、御心に適うことが行われますように」(マルコ14:36)と祈りによって神への信頼へと導かれた。>

◇わずかな食物を前にして、しかしこれも主が与えて下さったものと「感謝の祈り」を捧げ、それが最善に活かされることを祈り願うその時に、独占を超えた正しい配分が起こってくるのである。>

◇私たちは「主の祈り」を祈る群れである。「御名が崇められ、御国が来たらされ、御心が行われますように」。いずれも神の支配が成就し、そこにゆだねていくことが出来ますようにという祈りだ。私たちはそのような祈りを教えて下さり、その祈りによって互いに分かち合うことを教え、自らその祈りを生ききった主イエス・キリストをかしらとする「祈りの共同体」をここに築いていきたい。



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