礼拝説教


2008/9/14  聖霊降臨節第19主日

       「秘められた計画」 牧師 大村  栄

ローマ書 11:25−36 


◇ローマ書は前半8章までで「キリストを信じることにより、信じる者すべてに与えられる神の義」 (3:22)を語り、後半の9章以下に入るが、肝心のイスラエルが神に選ばれた民でありながらこれを拒絶したとパウロは痛みをもって語る。そして結局救いとは人間の知性や知恵によって理解されるものではなく、神の「25:秘められた計画」に関わる出来事なのだという結論に達する。

◇個人の生涯にも世界の歴史にも、背後に神の支配と計画がある。「25:兄弟たち、…次のような秘められた計画をぜひ知ってもらいたい。すなわち、一部のイスラエル人がかたくなになったのは、異邦人全体が救いに達するまでであり、26:こうして全イスラエルが救われるということです」。同胞イスラエルの不信仰という悩ましい出来事の背後に、それによって「異邦人全体が救いに達する」という神のご計画があることに気付かされたパウロは、その実現のために生涯を捧げるのだ。

◇ 神の救済計画はユダヤ人の拒絶によって方向転換した。しかしそれで終わらない。イスラエルの不従順は、それによって神が最後には「32:すべての人を憐れむためだったのです」。言わばイスラエルと異邦人は抜きつ抜かれつのレースを競ってきたが、最後には両者ともにゴールに飛び込み、等しく金メダルを受けることになっているのだ。イスラエルと異邦人、キリスト教と他宗教、教会の内と外、そういう関係を対立的に意識しすぎるべきではない。

◇万物は神の救いというゴールに向かって創造された。決して破壊に向かうのではない。そしてそのゴールは遠くない。世界は緊張したレースをいつまでも続けるのではない。もうすぐ皆で一緒にゴールに到達し、歓声をあげようとしているのだ。

◇ 人間の理解を越えた神の「秘められた計画」に気付いたパウロは、ただ賛美するしかない。「33:ああ、神の富と知恵と知識のなんと深いことか」。そして「36:栄光が神に永遠にありますように、アーメン」。賛美で始まりアーメンで終わるのは<祈り>だ。これ以上理論的に説明する言葉はいらない。「神の知恵」は賛美と祈り、すなわち礼拝の対象にほかならない。個人の生涯においても、世界と人類の歴史においても、私たちは「御国を来たらせたまえ」と祈りつつ、神の計画に従っていくのである。

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