2010/6/20 聖霊降臨節第5主日礼拝
「人間の回復」
牧師 大村 栄
マルコ福音書5:1〜20
◇「1:ゲラサ人の地方」に渡ったイエスと弟子たちの一行は、「2:汚れた霊に取りつかれた人」と出会う。「3:この人は墓場を住まいとしており、…5:昼も夜も墓場や山で叫んだり、石で自分を打ちたたいたりしていた」。何にも執着せず、自己破壊的で暴力的になっているその男は、イエスを見るとその偉大な権威を直感して大声をあげた。名を尋ねられると、「9:名はレギオン。大勢だから」。ローマの軍隊用語で「軍団」を意味する。大勢で寄生して、人間に分裂と混乱を起こさせる勢力なのだろう。
◇悪霊は「12:豚の中に送り込み、乗り移らせてくれ」と願い、主が許すと、「13:二千匹ほどの豚の群れが崖を下って湖になだれ込み、湖の中で次々とおぼれ死んだ」。宮崎県では今年になって牛の伝染病である「口蹄疫」の被害により、すでに20万頭を超える牛が殺処分され、地に埋められている。
◇豚2000匹の飼い主にとっても大ショックだった。騒ぎを聞いて駆けつけた人々が見たのは、「15:レギオンに取りつかれていた人が服を着、正気になって座っている」姿。大きな被害を代償に実現したのは、たった一人の男の生まれかわり。それを喜んで受け入れられない彼らは、「17:イエスにその地方から出て行ってもらいたいと言いだした」。
◇悪霊から解放された男はイエスに従って、「18:一緒に行きたいと願った」が、主は彼に自宅に帰って「19:主があなたを憐れみ、あなたにしてくださったことをことごとく知らせなさい」と命じた。主に従う者は、その方法も主に委ねるべきである。
◇この男に主が「してくださったこと」とは、自暴自棄になっていた彼を、高価な財産を代償にして、本来の生きる道に引き戻して下さったことだ。彼は「おまえを失いたくない」という神の愛の中で自分を取り戻し、その愛を宣べ伝える者となった。「わたしの目にあなたは価高く、貴く、わたしはあなたを愛し、あなたの身代わりとして人を与える」(イザヤ書43:4)。最大の「身代わり」が十字架の主イエス・キリストの命だったのだ。
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