2010/7/04 聖霊降臨節第7主日礼拝
「この時のために」
牧師 大村 栄
エステル記4:10〜5:8
◇紀元前5世紀、舞台はクセルクセス1世治下のペルシアの都スサ。その頃ペルシャはギリシャとの戦争に疲弊していた。スサにはバビロン捕囚だったユダヤ人の子孫たちが住み着いていた。その一人エステル(「星」の意味)は王妃となったが、養父モルデカイの指示で、ユダヤ人であることを隠していた。
◇王の側近である大臣ハマンは、自分に敬礼しないモルデカイが気に入らなかった。神以外を敬わないユダヤ人を滅ぼし、財産を没収して軍事費に当てることをハマンは王に提案して承認を得た。王は愛するエステルがユダヤ人だとは知らなかったのだ。
◇モルデカイはエステルに、ハマンの計画を阻止するため王に嘆願するよう迫ったが、彼女は「お召しがない」のに近づくのは王妃と言えども危険と躊躇する。養父は「14:この時にあたってあなたが口を閉ざしているなら、ユダヤ人の解放と救済は他のところから起こり、あなた自身と父の家は滅ぼされるにちがいない。この時のためにこそ、あなたは王妃の位にまで達したのではないか」と強く言う。
◇私たちも「この時のためにこそ」自分は存在したのかも知れないと自覚する時がある。神は私たちにそういう「人生の課題」をお与えになる。エステルは王宮に向かう決意をしてモルデカイに要望した。「16:スサにいるすべてのユダヤ人を集め、私のために三日三晩断食し、飲食を一切断ってください」。断食は「祈り」を意味した。エステルには同胞の祈りによる支援が必要だった。教会は祈りによって支え合う共同体である。それによって神から託されたそれぞれの「人生の課題」を担う者とされる。
◇彼女の勇気は祝され、ユダヤ人殺戮計画は阻止され、首謀者ハマンは処刑された。しかし本書はエステルの英雄伝ではない。「14:あなたが口を閉ざしているなら、ユダヤ人の解放と救済は他のところから起こる」とあった。人間が無力でも、神は「ほかのところから」解放と救済を起こして下さる。神の人類救済計画において「この時のために」という最大の献身をした方がイエス・キリストなのである。
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