2011/11/6 <降誕前第7主日>
「無から有を呼び出す神」
牧師 大村 栄
ローマ書4:13~25
◇アブラハムは神の「あなたを大いなる国民にする」(創世記12:2)との神の約束を信じて出発したが、エジプトでは失敗を犯した。ファラオが自分の美しい妻のサライをねらっているのを知り、彼女を妻ではなくて妹だと偽って王に差しだした。ファラオは好きになった女性の兄と信じてアブラハムをもてなし、莫大な貢ぎ物を彼に与えた。この時彼が妻をそうしたのは、彼女が不妊の女であったからではないか。アブラハムは子孫繁栄の約束は妻によってではなく、甥から実現していくと彼は考えていた。彼は神の約束の実現の仕方について、勝手な思いこみをしていたが、神によって衝撃的な軌道修正を与えられたのである。
◇「13:神はアブラハムやその子孫に世界を受け継がせることを約束されたが、その約束は、律法に基づいてではなく、信仰による義に基づいてなされたのです」。律法とは、何々をすれば祝福されるという合理的な理論である。アブラハムは不妊の妻から子孫は発生しないと合理的に判断した。しかしそういう判断によってではなく、ただ神への信頼によってのみ祝福の約束は実現する。
◇「18:彼は希望するすべもなかったときに、なおも望みを抱いて信じ、『あなたの子孫はこのようになる』と言われていたとおりに、多くの民の父となりました」。その信仰に達するまでに、アブラハムには通らねばならない段階が幾つもあった。
◇その後もサラには一向に妊娠の気配はなかった。「19:そのころ彼は、およそ100歳になっていて、すでに自分の体が衰えており…」とある。日野原重明先生は、R・ニーバーの祈りの言葉、「変えることのできないものを受け入れるだけの、冷静さを与えたまえ」を、「老い」という避けられないものに対して持つべき態度として勧めている。
◇しかしアブラハムにとっては「老い」という現実の彼方にある「神の約束」こそが「変えることのできないもの」だった。だから、「17:死者に命を与え、存在していないものを呼び出して存在させる神」を信じ、「18:希望するすべもなかったときに、なおも望みを抱いて信じ」たのである。
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