2015/11/22 −降誕前第7主日−
「救いの歴史」
エレミヤ書23:1〜6
牧師 大宮 溥
◇「神は、かつて預言者たちによって…先祖に語られたが、この終りの時代には、御子(キリスト)によって私たちに語られました」(ヘブライ1:1〜2)。これらの預言者たちの代表とも言うべきエレミヤは、紀元前7世紀に召命を受け、混乱の中に眠る時代に神が目覚めて、審判に立たれたことを知り、同胞に対して、真の神に立ち帰り、神の掟に従って「正義と恵みの」国造りをなすように語った。ヨシヤ王による「申命記改革」に賛同したが、この王の早逝と後継者たちの失政によって、彼はこの国に神の審判による滅亡が来ることを預言した(23:1〜2)。
◇羊飼いとして立てられている国の指導者たちが、国家の危機に際して、自分たちの安泰のために、国民から搾取と略奪をほしいままにしている。「共生社会」でなく「略奪社会」となり、人々は敵に侵される前に、同胞から略奪されている。しかし真の羊飼いは「イスラエルの神、主」であり、神はこの悪しき羊飼いを罰し、国の滅びを決意されたことをエレミヤは知った。
◇そして神は、救いの歴史を新たに起こし、新しい羊飼いを立ててくださる。ダビデの株から若枝が起こされる(3〜5節)。後にエレミヤはこのユダの回復の思想を「新しい契約」という幻に展開した(31:31〜34)。パウロはこの新しい契約(新約)がキリストによって、神と人類との間に締結されたと教えている(コリントII3章)。十字架と復活によって、わたしが神の内に宿り、神がわたしの内に宿ってくださるという、霊的共同体が形成されたのである。我々はイエス・キリストを羊飼いとする神の羊の群れである。
◇第二次世界戦争後の日本社会は、エレミヤが予言したユダヤの滅亡と「新しい契約」による新生を経験した。それから70年を経た今、国家や民族の自己絶対化によって戦争と破滅への危険に晒されている時、新しい契約に基づく和解の使者としての教会の使命(コリントⅡ5:18)を心に留めて、その使命を果たしてゆきたいものである。
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