礼拝説教

2016/12/25 -降誕祭礼拝-

「神の栄光と民の喜び」

ルカによる福音書2:1〜20
牧師 大宮 溥



◇キリストの誕生は、ローマ皇帝アウグストが「全領土の住民に(戸籍)登録をせよとの勅令」を出したときであった。この「領土」と訳された「オイクーメネー」は「人間が住んでいる世界」を指す。このような世界理解が定着したのはローマ帝国時代であった。しかし、世界史的な出来事でも、皇帝アウグストとイエス・キリストでは、世界における働きと位置について、大きな違いがあった。アウグストは世界の頂点に君臨し、命令一つで全領土に住民を総動員するような権力者であった。それに対してイエスは世界の底辺に生まれ、人間すべての重荷を自分が代わって担い、贖いの死を遂げた。

◇最初のクリスマスの夜、世界の底辺のような野原にいた羊飼いを、天からの神の栄光が照らしたので、「彼らは非常に恐れた」。「神の栄光」は「聖なる光」であり、これを浴びると人間は泥まみれの姿が暴露されて、粉々に砕かれる。「聖なるもの」は、「戦慄すべき神秘」と「魅了すべき神秘」である(ルドルフ・オットー)。しかしイエス・キリストは他の人間すべての罪と滅びをご自分に引き受けてくださるので、われわれは罪を消し去られ、永遠の命に生きる者となる。イエスの誕生日は神の民の誕生日となる。

◇羊飼いたちは、天使の御告げと天軍の賛美を聞いたとき「主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか」と応じ、聖家族に出会った。クリスマスは救い主が永遠から時間の中に来られるときであるとともに、われわれ神の民が信仰を新たに燃え上がらせて主と出会うときである。アッシジのフランチェスコは、1223年のクリスマスにグレッチオの洞窟に、ベツレヘムの厩を模した礼拝所を作り、賛美のミサをあげた。人々はそこで、死んだか眠っているような幼な子が、フランチェスコに抱かれて目を覚ますのを見たと伝えている。われわれも、今年のクリスマスに、信仰と希望と愛を燃やして、生けるキリストを迎えようではないか。

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