2017/02/19
「完全への道 — 愛に生きる」- 降誕節第9主日礼拝 -
マタイによる福音書5:38〜48
牧師 大宮 溥
◇「山上の説教」で主イエスは「神の国」の市民への祝福を告げ、彼らの生きる道を示している。ここには、旧約の民が守ってきた律法を越えた「より勝れた義」、完全の道が教えられている。
◇「目には目を、歯には歯を」は、古代法の基本の「同態応報刑」で、被害に倍返しせず、それを私刑(リンチ)でなく、公の刑事罰としたものである。しかし主イエスはこれに対して、無抵抗を命じられた。憎しみの連鎖反応を断ち切って、憎しみに愛をもって応えよと命じる。
◇このような、「より勝れた義の道」の頂点に「敵を愛せよ」の教えが置かれる。「隣人愛」の掟はレビ記19:18にあるが、そこでは「隣人」が同胞と解釈されていたので、異国人、異教徒は敵であった。それに対して主は「敵を愛せよ」と命じられた。キリストがこの世に来られるまでは世界は愛の神と憎しみのサタンとの戦いの場であった。キリストは「神の国」の到来の最先端に立たれ、十字架と復活によって神の国の基礎を打ち立てられた。そして、その弟子たちを「形成途上の神の国」の市民として愛の道を歩むように促されたのである。
◇公民権運動を起こしたキング牧師は「汝の敵を愛せよ」の説教で、①「憎しみに憎しみを返す道は、憎しみを増すだけであり、すでに星のない夜になお深い闇を加えるだけだ」②「憎しみは魂に傷跡を残し、人格をゆがめる。憎しみは人格を切り裂き、愛は人格を結合させる」③「愛は敵を友に変えることのできる唯一の力である」と教えた。
◇主イエスは「愛の道」が「完全への道」であると教え、「あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全なものとなりなさい」と命じられた。我々のメソジスト教会の創立者ジョン・ウェスレ—は「キリスト者の完全」を人生のモットーとした。現在の世界で、自国第一主義の閉鎖的志向が強くなっているとき、われわれは改めて主の御促しに心を向けよう。
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