礼拝説教


2020/08/09ー聖霊降臨節第11主日礼拝ー

「隔ての壁が取り壊された」

使徒言行録10:23b〜33
牧師 古屋治雄


◇2000年前に生まれたキリスト教の信仰は現在、世界中に告げ広められている。その最初期の異邦人伝道の担い手としてまずパウロが挙げられる。しかしペトロの働きもユダヤ社会に留まってはいない。今日の聖書個所を含む10章から11章18節にいたる大きな記事にその働きが記録されている。

◇10:9以下でペトロは空腹のうちに幻を見る。あらゆる獣が入った巨大な布が天から吊り下ろされて「屠って食べなさい」という声が聞こえる。ペトロにとっては律法に反することで「とんでもないこと」である。しかし神様が清められたものが清くないはずがないのである。ペトロは戸惑い、思案に暮れる。

◇考え込んでいるうちに、ペトロを訪ねて来る人があった。カイサリアのコルネリウスの使いである。ローマ皇帝の名を冠した町に住むローマ風の名前の人からの使いである。もちろん異邦人に違いない。使者が言うには、天使のお告げがあって、どうしてもペトロの話を聞かねばならないという。

◇ここでペトロは幻の意味を理解する。それは食物規定の撤廃を意味しているだけでなく、ユダヤ人と異邦人との間の壁の撤廃だったのである。「どんな人をも汚れている者とか言ってはならない」のである。彼の内に転換が起こる。今までは、自分が神の民としてふさわしくあれば良かった。しかしこの時、異邦人も視野に入れさせられたのである。「地の果てに至るまで、わたし(イエス様)の証人となる。(1:8)」というみ言葉が実現するのである。

◇それはすでにアブラハムに約束されていたことである。「地上の氏族はすべてあなたによって祝福に入る。(創世記12:3)」この地上にはユダヤ人も、ユダヤ的背景を持つ人も、そうでない人も、イエス様のことを聴きたい、福音に触れたい人が大勢いる。聴く人々にも、遣わされるペトロにも聖霊が働くのである。

◇私たちは、神様のみ心の手前で壁を作っていないだろうか。「どうせイエス様の話など聞いてもらえない」と。しかしそうではない。そこでは神様ご自身が働かれ、その力が現れる。私たちが勝手に福音の射程を狭くしてはならない。

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