礼拝説教


2020/11/29-待降節第1主日礼拝-

「へりくだる生き方」

フィリピの信徒への手紙2:6〜11
協力牧師 中野 実


◇今日の聖書箇所は「キリスト賛歌」と呼ばれてきた。ここから、私たちは人間として知らなければならない大切な価値観を知ることができる。神であられるキリストが徹底的に自らを低くし、人間となってくださった。それどころではなく、なんと僕の形をとられ、十字架上で殺され、人間の最も惨めな姿にまでなってくださった。これが神の「へりくだり」であり、私たちもこの新しい価値観を学び取らねばならない。

◇パウロはこのことをフィリピにある教会に対して語ったが、多くの人々が力と富を手に入れ、思いどおりに生活できることを求めていた。人間が神のように力を手に入れ、自分の思いどおりに支配したい。そんな価値観を重んじる傾向は、現代の私たちにもある。しかし、パウロは「私たちの国籍は天にあります」と告げる。私たちは天の市民であり、すなわち「へりくだり」という価値観をもってこの地上を歩むようにと告げる。

◇私たちはいろいろなもの、特に自分の命を自分のものだと勘違いしている。聖書は語る。すべてのものは神様のもの、私の命すら自分のものではない。そのような認識から出発する新しい価値観が「へりくだり」である。星野富弘氏の詩に次のようなものがある。「いのちが一番大切だと思っていたころ生きるのが苦しかった。いのちより大切なものがあると知った日、生きているのがうれしかった。」いのちより大切なもの、つまり、自分の命は神様のものであるということを知ったとき、生きることがうれしくなった。そういう意味であろう。

◇今日から迎える待降節は神が人となられた恵みをおぼえる季節である。人が神にならないために、神は人となってくださった。それ故、私たちは自らを低くせざるをない。弱さ、低さにおいてこそ働く神様を私たちが本当に知るために、この出来事はどうしても必要であった。これを証言するために、私たちは召され、それぞれの持ち場を与えられている。その恵みと使命をおぼえながら、今日から始まる一週間の歩みをなしていきたい。

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